「今日も楽しかった!」
スクール帰りの車内でそう笑う息子の顔を見ながら、親である私は少し複雑な気持ちになることがあります。「楽しかった」は嬉しい。けど、心のどこかで**「楽しいだけでいいのかな?」「もっと上手くなってほしいのに、週1回じゃ足りないんじゃないか」**「試合に勝ちたいとなったら、もっと練習量を増やさないといけないのでは」という焦りを感じてしまうのです。
同じような悩みを持つ親御さんは多いのではないでしょうか。 特に9歳(小学3~4年生)という時期は、運動能力が飛躍的に伸びる「ゴールデンエイジ」の入り口。周りの子が急に上手くなったり、今まで同じクラスでやっていた子が選手コースに誘われて、同じ時間帯で別コートで練習しているのを見ると、余計に焦ってしまいますよね。
でも、断言します。 週1回のスクールでも、上達は可能です。 鍵を握るのは、スクールのない残り6日間の過ごし方、つまり**「親子練習(お家テニス)」**の質です。
今回は、テニス経験の有無にかかわらず、今日から実践できる「週1回でも強くなる親子練習の考え方」について、深く掘り下げてお伝えします。週1しかスクールに通えなく焦っている保護者さんも多いかと思いますが、できることを見つけてやることが大切です。
1. なぜ「週1回」だと伸び悩むのか?その正体を知る
まず、敵を知ることから始めましょう。なぜ週1回の練習だと上達が遅いと感じるのでしょうか。 それは、技術の問題ではなく**「忘却曲線」**の問題です。
人間の脳は、習ったことを忘れるようにできています。スクールで素晴らしいコーチに「フォアハンドの打点」を教わっても、次のレッスンまでの6日間、ラケットを握らなければ、脳はそれを「重要ではない情報」として処理し、リセットしてしまいます。
つまり、毎週のレッスンが「積み上げ」ではなく「思い出して終わり」になってしまうのです。
親ができる最大の役割は「記憶のつなぎ止め」
ここで親御さんの出番です。 親がやるべきことは、プロ並みの技術指導ではありません。スクールで教わった感覚を、次のレッスンまで**「完全に忘れさせない」ためのブリッジ(橋渡し)**になることです。
「1日5分」でいいのです。 ラケットを握る、ボールに触る。それだけで、脳への定着率は劇的に変わります。
2. 9歳男子の取扱説明書:キーワードは「競争」と「肯定」
親子練習を始める前に、9歳の男の子の特性を理解しておく必要があります。この時期の男子は、**「認められたい」という承認欲求と、「勝ちたい」**という競争心が入り混じった複雑な生き物です。
ここでやってはいけないのが、「鬼コーチ」になってしまうこと。 私はついついやってしまいがちですが・・・(笑)いつも練習終わってから反省しています。子供の練習を見ている表情も多分、鬼の形相になっているかも(笑)「なんでできないの!」「もっと膝を曲げて!」 こうした言葉は、彼らのやる気を一瞬で奪います。彼らはまだ、理論よりも感覚で動いています。
効果的な「ゲーミフィケーション」
練習を「ドリル」ではなく「ゲーム」に変換しましょう。
- × 「ボレーボレーを100回続けなさい」
- ○ 「パパとボレーボレー対決! パパがミスするか、お前が100回できるか勝負だ!」
9歳男子は「勝負」と言われると目の色が変わります。親が少しだけハンデを背負い、ギリギリ勝てるか負けるかのラインを演出する。これが最強のモチベーション管理です。また、おやつとかをかけてなどやるとさらに楽しめます。我が家では、
・サーブ練習では、コーンを置いて1回当たったら高級アイスなど!!
3. 家でもできる!「テニス脳」を鍛える具体的メニュー
コートがなくても、広い庭がなくても大丈夫です。週1回のスクールの効果を最大化するための、お家トレーニングメニューをご紹介します。
① 「目」を鍛える:ボールキャッチ・ビジョン
テニスは「打つ」スポーツである以前に、ボールとの距離を測るスポーツです。
- お手玉: 2つ、できれば3つのお手玉。動体視力とリズム感が養われます。
- ランダムキャッチ: 親御さんがボールを持ち、上下左右どこに落とすか分からない状態でパッと離す。それを子供がワンバウンドでキャッチ。反応速度を鍛えます。
② 「感覚」を鍛える:フレームリフティング
ラケットの面(ガット)ではなく、**フレーム(枠)**でボールつきをします。 これは非常に難しいですが、集中力と「ラケットの中心を知る」感覚が鋭くなります。「最高記録は何回?」と記録への挑戦を促しましょう。
③ 「フォーム」を固める:動画撮影とスロー再生
今の時代、スマホという最強のツールがあります。 素振りを動画で撮り、一緒に見てみてください。
「今のスイング、フェデラーみたいでカッコよかったよ! でも、ここだけもう少しラケットが下がるともっと速い球が打てそうじゃない?」
自分の姿を客観的に見ることは、言葉で100回説明されるよりも効果があります。ポイントは**「ダメ出し」ではなく「カッコいいポイント探し」から入る**ことです。
4. 親子練習の「落とし穴」と回避策
親子練習は諸刃の剣です。距離が近い分、どうしても感情的になってしまいがちです。 「せっかく付き合ってやってるのに、やる気がないなら辞めちまえ!」 そう言いたくなる瞬間が、必ず来ます。
そんな時は、この言葉を思い出してください。 「テニスを嫌いにさせたら、そこで試合終了」
週1回のスクール生が強くなるための唯一の条件は、「長く続けること」です。 家での練習で喧嘩をして、テニス自体が嫌いになってしまっては本末転倒です。
魔法の合言葉「今日はここまで!」
子供の集中力は長く続きません。特に家ではリラックスしたいモードに入っています。 「もう少しやりたいな」と子供が思っているところで、**「よし、今日はいい球打てたから終わりにしよう!」**と親から切り上げてください。
「まだやりたかった」という飢餓感が、次の練習への意欲につながります。
5. スクール当日の「車内コミュニケーション」術
週1回のスクールの日。送迎の車の中での会話が、実は上達のカギを握っています。
行きの車内:「今日のテーマは1つだけ」
「あれもこれもしなさい」と言っても9歳の脳はパンクします。 「今日はコーチの話を誰よりも真剣に聞こう」 「今日はフォアハンドの時、膝を曲げることだけ意識してみよう」 このように、今日のクエスト(目標)を1つだけ設定してあげてください。
帰りの車内:「感想戦ではなく、発見の共有」
「どうだった?」と聞くと「楽しかった」としか返ってきません。 また、「あそこがダメだったね」という反省会もしないでください。疲れている時に親からのダメ出しは、ただのノイズです。
代わりにこう聞いてください。 「今日、コーチに言われて『なるほど!』って思ったこと、パパ(ママ)にも教えてくれない?」
子供に「先生役」をやらせるのです。教わったことを親に説明することで、彼らの脳内で情報の整理と定着が行われます(これを「ラーニングピラミッド」の効果と呼びます)。
6. 親の想いと子供の成長曲線のズレを受け入れる
最後に、一番大切なマインドセットをお伝えします。
私たち親は、右肩上がりの一直線な成長を期待してしまいます。 しかし、現実の子供の成長は**「階段状」**です。 一生懸命練習しても全く上手くならない「停滞期(踊り場)」が必ずあります。そしてある日突然、ポン!と一段上に登る日が来ます。
週1回だと、この「踊り場」の期間が長く感じるかもしれません。 「月謝が無駄なんじゃないか」 「センスがないんじゃないか」 そう思う日もあるでしょう。
でも、停滞期こそが、脳と体が新しい動きをインストールしている重要な期間なのです。 この時期に親が焦ってプレッシャーをかけたり、諦めたりしないでください。
「今はエネルギーを溜めている時期だね。爆発する時が楽しみだ!」
そうドーンと構えていてください。親の「信じる力」は、どんな高価なラケットよりも子供を強くします。
まとめ:週1回は「ハンデ」ではなく「武器」になる
週1回のスクール生には、毎日練習している子にはない武器があります。 それは**「1回1回の練習に対する飢え」と「考える時間」**です。
ボールを打てない時間が多いからこそ、「どうすれば上手くなるか」を頭で考え、家で工夫し、親とコミュニケーションを取る。このプロセスは、テニスだけでなく、将来の勉強や仕事にも通じる「課題解決能力」を育みます。
たった週に1回、1時間。 でも、1年なら52時間。 親と一緒に家でプラスアルファ積み上げれば、100時間にも200時間にもなります。
9歳という、親と一緒に何かに取り組んでくれる、短くて愛おしい時期。 テニスというツールを使って、親子の絆を深めながら、一緒に成長を楽しんでいきましょう。
あなたの息子さんは、きっと強くなります。 なぜなら、こんなに熱心に考え、悩んでくれる親御さんがついているのですから。
さあ、今日はリビングで「風船リフティング対決」から始めてみませんか?
次のステップ:今日からできること
この記事を読んだ後、もし息子さんが近くにいたら、こう声をかけてみてください。 「今度の日曜、10分だけでいいからパパ(ママ)と家の前でテニス遊びしない?」 まずは「遊び」から、二人の特別な時間をスタートさせてください。
このブログ記事が、あなたの、そして多くのお父様お母様の背中を押すきっかけになれば幸いです。

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