はじめに:40歳、人生の折り返し地点で考える「働き方」
「今の仕事を65歳、いや70歳まで続けられるだろうか?」
40歳を迎えたとき、ふとそんな不安が頭をよぎることはないでしょうか。体力的な衰え、組織内での立場の変化、そして親の介護や子供の教育費。40代は「責任世代」と呼ばれるほど、背負うものが増える時期です。
そんな40代にこそ、強くおすすめしたいライフスタイルがあります。それが**「Coast FIRE(コースト・ファイア)」**です。
完全に仕事を辞める「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」は、億単位の資産が必要でハードルが高い。しかし、Coast FIREなら、もっと現実的な金額で「老後のお金の不安」から解放されます。
この記事では、**「40歳時点でいくら資産があればCoast FIRE達成なのか」**を徹底シミュレーションします。この数字を知るだけで、明日からの景色が変わるはずです。
そもそも「Coast FIRE」とは何か?
資産形成の「上がり」を目指す状態
Coast FIREとは、**「老後のための資産形成は完了した状態」**を指します。
具体的には、**「今ある資産を、一切追加投資せずに65歳まで放置(複利運用)すれば、目標とする老後資金に到達する」**という状態です。
Coast FIREのメリット
達成すると、以下のような劇的な変化が訪れます。
- 「貯金のための労働」から解放される 毎月の給料から、老後資金を積み立てる必要がなくなります。稼いだお金は、すべて「現在の生活費」や「子供の教育費」「趣味」に使ってOKになります。
- プレッシャーの少ない仕事を選べる 高年収だけど激務な仕事にしがみつく必要がなくなります。生活費さえ稼げればいいので、週3日勤務や、給料は下がってもやりがいのある仕事への「ダウンシフト」が可能になります。
シミュレーションの前提条件を設定する
いくら必要かを計算するには、「ゴール」と「乗り物(利回り)」を決める必要があります。
1. ゴール設定:老後2000万円問題はもう古い?
インフレや年金受給額の減少リスク、長寿化(人生100年時代)を考慮すると、2000万円では心許ないのが現実です。ここでは、少し余裕を持った**「65歳時点で5000万円」**をゴールと仮定します。
- 公的年金 + 資産5000万円 = 豊かな老後
2. 運用期間:40歳から65歳までの「25年間」
ここが40歳の強みです。まだ25年という長期投資の時間が残されています。
3. 想定利回り:現実的な「年利4〜5%」
S&P500や全世界株式(オール・カントリー)の過去の平均リターンは7%程度ですが、インフレ率を引いた実質リターンとして、保守的に4%と5%、そして少し強気の**7%**の3パターンで計算します。
【結論】40歳で必要な資産額はこれだ!
それでは、実際に計算してみましょう。 目標:65歳で5000万円
ケースA:堅実派(年利4%運用)
- 必要資産額:約1,876万円
「えっ、意外と多い…」と思われましたか?しかし、これがあれば、今後25年間1円も貯金しなくても、年利4%で運用し続けるだけで5000万円になります。 もし現在1800万円持っているなら、あなたは今日から「老後のための貯蓄」を卒業できます。
ケースB:標準派(年利5%運用)
- 必要資産額:約1,477万円
1500万円を切りました。40歳で1500万円。共働き世帯や、20代からコツコツ貯めてきた独身者なら、十分に手の届く範囲ではないでしょうか。 この1477万円を「新NISA」などの非課税口座やiDeCoで運用していれば、税制メリットも享受でき、より確実性が高まります。
ケースC:楽観派(年利7%運用)
- 必要資産額:約921万円
なんと1000万円以下になります。S&P500の過去実績を信じるなら、40歳時点で921万円を投資に回しておけば、65歳には5000万円になっている計算です。 「1000万円」というのは、Coast FIREを目指す40代にとって一つの大きなマイルストーンと言えるでしょう。
参考:ゴールを「3000万円」に下げた場合
「退職金もあるし、資産は3000万円で十分」という場合、ハードルはさらに下がります。
- 年利4%の場合:約1,125万円
- 年利5%の場合:約886万円
もし「足りない」場合はどうする?
「計算してみたけど、今の資産じゃ全然足りない!」 そんな方も焦る必要はありません。40歳ならリカバリー可能です。以下の3ステップでCoast FIREを目指しましょう。
ステップ1:家計の「固定費」を徹底的に削る
まずは入金力を高めるために、固定費を見直します。
- 保険:掛け捨てのみにする
- 通信費:格安SIMにする
- サブスク:不要なものを解約する 月3万円浮けば、年間36万円の投資資金が生まれます。
ステップ2:まずは「1000万円」を目指して集中投資
前述の通り、1000万円あれば、年利7%運用で65歳5000万円が見えてきます。 まずは最初の1000万円を作るまで、副業や節約で「全力入金」期間を作ってみてください。ここを乗り越えれば、あとは複利が勝手に働いてくれます。
ステップ3:ゴール(定年)を後ろ倒しにする
もし40歳で資産が少なくても、「長く働く」ことを前提にすればCoast FIREは可能です。 例えば、70歳まで働くつもりで運用期間を「30年」に延ばせば、年利5%運用で目標5000万円の場合、現在の必要資産は約1,157万円まで下がります(65歳目標だと約1,477万円でした)。 「健康に働き続けること」こそが、最強の資産形成術なのです。
40代からのCoast FIREにおける注意点
数字上は達成可能でも、人生には不確定要素があります。
1. 教育費は「別枠」で考える
ここが最大の落とし穴です。 お子さんがいる場合、大学進学などで数百万単位の現金が必要になります。 Coast FIRE用の資産(投資信託など)は「老後まで絶対に取り崩さない」ことが前提の計算です。 教育費として使う予定のお金が混ざっているなら、それはCoast FIRE資産から除外して計算しなければなりません。
2. 暴落リスクを想定する
「取り崩さない」とはいえ、資産額が半減するような大暴落が来ると精神的に動揺し、狼狽売りしてしまうリスクがあります。 40代は守りの姿勢も大切です。全額株式ではなく、債券や現金を適度に組み合わせたポートフォリオ(資産配分)を維持しましょう。
3. 「今の生活」を犠牲にしすぎない
Coast FIREの目的は「精神的な自由」です。 達成のために今の生活を切り詰めすぎて、家族との時間や健康を失っては本末転倒です。40代は体力も落ちてきます。無理な節約より、長く細く続けられるバランスを見つけることが重要です。
おわりに:心のアクセルを緩めるために

40歳という年齢は、若さと老いの狭間で揺れる時期です。 これまでは「もっと稼がなきゃ」「もっと出世しなきゃ」と、アクセルをベタ踏みで走ってきたかもしれません。
しかし、Coast FIREという概念を知り、「いくらあれば大丈夫なのか」という自分なりのゴールを持つことで、心のアクセルを少し緩めることができます。
「今の資産で、老後はなんとかなるかもしれない」
そう思えるだけで、嫌な上司の言葉も聞き流せるようになり、本当に大切な家族との時間や、自分のやりたかったことに目を向けられるようになるはずです。
まずは、今の自分の資産額を正確に把握し、シミュレーションサイトなどで計算してみることから始めてみませんか? その小さな一歩が、あなたの40代からの人生を、より豊かで自由なものにしてくれるでしょう。


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